目黒の地に足を踏み入れると、そこは単なる東京の一角ではなく、時空を超えた芸術と文化の宝庫が広がる特別な空間—— 目黒雅叙園 。そして、その歴史と美の殿堂の一角に佇む鉄板焼きの名店、STEAK HOUSE hama。今回はこの二つが織り成す、贅沢かつ知的なランチ体験をご紹介します。
歴史を紡ぐ雅叙園の美空間
1931年、料亭として産声を上げた 目黒雅叙園。その始まりは、創業者・細川力蔵が1928年に東京・芝浦で開業した 「芝浦雅叙園」にさかのぼります。その後、目黒の地に移り、格式高い料亭としての地位を確立。さらに、日本国内で最初の総合結婚式場としても知られるようになりました。
館内に一歩足を踏み入れると、目の前に広がるのはまるで一枚の生きた絵巻。昭和初期の芸術家たちが手がけた豪華絢爛な装飾は、まるで時代そのものが息づいているかのような迫力で、訪れる者を圧倒します。
特に有名なのが、99段の階段からなる 「百段階段」。そのひとつひとつの間に広がる座敷棟には、東京都指定有形文化財としての価値が宿っています。各部屋には異なるテーマが設けられ、琳派の影響を受けた絵画、漆工芸、金箔装飾など、日本美術の粋を凝縮した空間が広がります。この歴史的な場所に立つと、芸術と時代が交差する神秘的な感覚に包まれます。
そして、この文化財の空間に漂うのは、ただの懐古趣味ではありません。錦鯉が泳ぐ屋内の水路、絵画のように彩られた天井、ふと見上げるだけで心を奪われるその美しさは、現代の喧騒を忘れさせ、訪れる者に静かな感動を与えてくれます。
STEAK HOUSE hama——鉄板の舞台で繰り広げられる味覚の芸術
美の殿堂を堪能した後、足を進めた先にあるのが、目黒雅叙園内の STEAK HOUSE hama 。高級感溢れる絨毯の感触を足裏に感じながら、レストランの扉を開けると、そこはもう一つの舞台——鉄板の魔法が繰り広げられる場所です。
この日選んだのは 目黒ランチコース 。
まずは、海の恵みを堪能する一皿として、帆立貝のソテーが登場。表面はカリッと香ばしく、内側はしっとりと柔らかく仕上がった帆立は、まるで海の記憶そのものを閉じ込めたかのような一品。鉄板焼き特有の香ばしさが食欲をそそり、最初の一口から期待を大きく超えてきます。
続くメインは、黒毛和牛ロースステーキ150g。
一口頬張れば、まろやかな脂の甘みと、上質な肉の旨みが口いっぱいに広がり、自然と目を閉じてしまうほどの至福感。この和牛は、何世代にもわたる伝統と厳格な育成管理の下で育てられたもので、まさに日本が誇る食文化の結晶と言えるでしょう。
さらに、鉄板焼きという料理法自体も、戦後日本で発展した独自の食文化。シェフが目の前で繰り広げる巧みな技は、単なる調理ではなく、一種のパフォーマンスアート。料理と芸術が交錯するこの瞬間は、まさに五感を刺激する体験そのものです。
そして忘れてはならないのが、ガーリックライス。ただのご飯では終わらない、鉄板の香りとガーリックのパンチが加わることで、メインディッシュにふさわしい存在感を放っています。お腹はしっかり満たされ、心も満ち足りる感覚に包まれます。
食後のひととき——空間を変える、贅沢な余韻
このレストランの粋な計らいとして、デザートは別席で楽しむという演出があります。場所を移すことで気持ちもリセットされ、まるで新たな旅の始まりを迎えるような感覚に。静かで落ち着いた空間でコーヒーをいただきながら、プレートに盛り付けられた美しいデザートを味わう時間は、まさに至福そのもの。
知識人、美食家への招待——目黒雅叙園とSTEAK HOUSE hamaの魅力
目黒雅叙園とSTEAK HOUSE hamaのランチ体験は、単なる食事の枠を超えた、知的探究と感性の旅です。この空間は、国内外の知識人や美食家にこそ訪れてほしい——日本文化の粋を感じ、食の芸術に浸る特別な時間がここにはあります。
文化と歴史が紡がれた空間で味わう鉄板焼きは、ただのランチではなく、五感と知性を刺激する一つの体験。大切な人と過ごすひととき、あるいは自分へのご褒美として、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
Amabie Nomad